2学期始業式校長の話抜粋

高校三年生が進路実現に向けて最後の頑張りに入るので、今日は三年生に向けて話をしますね。ただ、高校一・二年生も、そして中学生も自分事として聞いていてください。

   私は今年で64歳になりますが、人生で今まで一番をとったことがないんです。いつも二番目でした。振りかえると、ずっと一番をとることが幸せになることだと思ってきました。でも一番になることは一つの手段であって、一番にならなくても本当の幸せはみつかるんじゃないかと気づいた。そうしたら、いろんな選択肢が見えてきて、失敗も許せるようになりました。

   そもそも、「失敗」ってなんですかね。「もうおしまいだ!」と思うようなことは何回もあったけど、3日経てば失敗なんて忘れている。自分では失敗に見えることも、あとから振り返ると成功の糧になっていたりする。結局人生を長い目で見た時に、失敗も成功もないんです。人生の最後の瞬間まで、何が失敗で成功かはわからない。

    今オンリーワンという素敵な価値観がありますが、そもそもオンリーワンは、ナンバーワンをめざして恐ろしいほどの情熱を向けたその先にあるのではないかと思うのです。最初からオンリーワンは気に入らない。やはりナンバーワンを目指すべきだと思います。でもナンバーワンを目指すことと、ナンバーワンを取らなくてはならないというのは違う価値観です。人生って、なかなか一番をとれない。

   人生って自分の生き方をくり返しリセットすることです。第一志望に合格した人、18歳の栄光を捨てて新しい目標に向けて自分の生き方をリセットしなくてはなりません。第一志望に届かなかった人、第二志望かもしれない第三志望かもしれない。でも自分が選んだ道を自分らしく生きている、そう胸を張って言えるよう、自分の生き方をリセットしなくてはなりません。

   一番を取った人、二番目の道を選んだ人、どれも人生です。これを比較して優劣をつけることは誰もできません。大切なことは社会に出た時に、その人がどれだけ豊かに生きているかだと思うのです。

   人生、いつ一番目の幸せがみつかるかわかりませんよ。私にとって、今一番の幸せは何ですかと聞かれれば、それは神奈川県の教員をやめて横浜創英の教員になったこと。素晴らしい先生方と生徒の皆さんに囲まれて仕事をしていることが一番の幸せであると答えます。64歳になってみつかる幸せもある。

   人は負けた時が終わりなのではありません。夢を持つことをあきらめ、目標を持つことをあきらめ、努力することをやめた時が終わり。君たちの夢は何ですか 君たちの目標は何ですか。もう一度しっかりと見つめ直しなさい。それさえ持っていれば道は必ず開ける。

   でもね、18歳の進路実現は夢ではなく可能性ですよ。可能性は背伸びなんですよ。はるか遠く先にある夢と違って、可能性は背伸びをすれば手が届くところにある。残りの時間、精一杯の背伸びをしてください。応援しています。