2023年の幕開けとして中学1年の総合学習に登壇したトップランナーは、東京女子医科大の脳神経外科でいらっしゃる藍原康雄さんです。「勉強はなんのためにするのか?」という問いに対し、藍原さんはおじいさまとのエピソードをお話しくださいました。おじいさまのことが大好きだった藍原さん。そのおじいさまは「では、おじいちゃんが困っていたらどうする?」と幼い藍原さんに聞いたのだそうです。そして「助けたい気持ちだけでは、助けることはできない。勉強をすると、助けたい人を助けられるようになる。」と教えてくださったのでした。その日から藍原さんは、掛け算の九九にも日々の勉強にも、目的が出来たのだと言います。そして脳神経外科として小児脳腫瘍の患者さんと向き合っている今、あのときのおじいさまの言葉は正しかったと改めて思っているとのことでした。
本来、「健康」は当たり前のものではなく、非常にギリギリの所で保たれています。そして、子供には学ぶ権利があり、それを果たす義務が大人にはあります。しかし、藍原さんが接している子供たちは「学びたくても学ぶことができない」環境にあることが多く、日本は支援が充実していません。藍原さんは子供たちが病気によって学校を休まざるを得ない状況を変えようと、院内学級の設立に尽力なさってきました。校長の工藤とも、その時に繋がりが生まれたのだそうです。院内学級「わかまつ」が生まれてから笑顔が増えた子も多く、中にはその後パラリンピックで活躍した方もいました。そして、限られた時間だとしても笑顔が増えて「そこでの時間は一生だった」と言える子もいたと話してくださいました。
早く行きたければ( ひとり )でいけよ。遠くへ行きたければ( みんな )でいけよ。このアフリカの諺や、「相手がいることの大切さ」を、中学1年生に丁寧な言葉で語ってくださった藍原さん。お好きである高村幸太郎の詩をご紹介くださったので、最後にここに掲載します。藍原さん、ありがとうございました。
高村光太郎 「当たり前」
当たり前のことでも 僕は言う 当たり前のことでも 僕はする